第1期EEEプロジェクト中間報告

概要:
本計画はITとの融合により初等教育現場に新たなパラダイムを導入するものである。


目的:
近年深刻化の一途を辿る学力低下・授業崩壊の工学的な解決を目指す。


方法:
児童コミュニティ内で現在人気を博している市販ゲームソフト【資料1】の手法を応用した携帯システム『ポケットしょうがっこう』を開発・運用する。すなわち:
イ)進捗センサーにより計測された学習の進捗状況に基づき仮想空間(バーチャルスクール)内のキャラクターが成長する。
ロ)成長したキャラクターは専用ブロードバンド・ネットワークを介した通信対戦により他の児童のキャラクターと競わせる事ができる。
ハ)また、キャラクターを交換(トレード)あるいは譲渡(イールド)する事ができる。
但し、PTAより競争心を煽るとの指摘を受け、以下の機能を割愛した:
ニ)対戦結果は専用サーバーに蓄積され、1ヶ月毎に全国ランキングを公表する。


実施例(1)――算数:
最新の文字認識・算術解析エンジンを用いて計算ドリルの進行数および正答率を評価、その積をキャラクターの経験値とする。なお、ロジック型のキャラクターは通常の倍の経験値を得ることができる。また、当該ドリルを最速で完了した児童には早解きボーナスとして100ポイントの経験値を与える。試験運用の結果、児童の計算力が5%〜35%向上した。


実施例(2)――理科:
最新の映像認識・美術解析エンジンを用いて鉢植え朝顔の成長率および開花構図を評価、その積をキャラクターの経験値とする。なお、プラント型のキャラクターは通常の倍の経験値を得ることができる。また、当該朝顔を最速で開花させた児童には早咲きボーナスとして100ポイントの経験値を与える。試験運用の結果、朝顔の開花率が25%〜30%向上した。


実施例(3)――道徳:
最新の行動認識・非行解析エンジンを用いて対象児童の生活態度および善行率を評価、その積をキャラクターの経験値とする。なお、イイヒト型のキャラクターは通常の倍の経験値を得ることができる。また、当該期日に最速で起床した児童には早起きボーナスとして100ポイントの経験値を与える。試験運用の結果、有害番組の視聴率が55%〜70%減少した。

 ――結局、このプロジェクトの最終報告が世に現れることはなかった。

「おい、知ってるか? ポケショーのカセット、半差しにするとバグってレベル255になるらしいぜ」
「マジかよ、最強じゃん!?」


(1000字・空白除く)